カードホルダーのお話。第1部。父親の優しさ。

お気に入りのカードをマグネットホルダー(通称:マグホ)に仕舞う時、カードホルダーの歴史が気になった。

マグホ以外にも、四隅をネジで留めるスクリュータイプや、二枚の透明板で挟んで壁や机に飾るものがある。誰がこんな便利なものを考えたんだろう?というのが発端。

調べてみると、きっかけは一人のコレクターが抱えていた不便と、困っている息子を助けようとする父親のアイデアだった。

高価なカードが、箱に入らない

1990年代初め、金型製作者Edward J. Neugebauer Sr.の息子は、スポーツカードを集めていた。高校時代から熱心なコレクターで、大学時代にはカードを売って学費などの足しにしていたという。

彼は自分の集めたカードを几帳面に番号順に並べ、シリーズ毎に収納箱へ入れていたようだ。ただし、高価なカードは硬質ホルダーに保管したいが、当時のホルダーは大きく収納箱へ入らない。

それを見た父親が尋ねた。

箱の中へ入るホルダーはないの?ないなら作ろうと思い立ち、設計を始めた。

父親はプラスチックの射出成型の会社に勤めていたらしい。当時の会社名はわからないが、今はPro-Moldという会社名でカード保護用品等を販売している。2020年に父親は、Pro-Moldの社長、息子が副社長とインタビューで言っていたようなので、自分の好きなように製品を開発できたのだろう。

ただ、日本では殆ど見かけないすよね。Pro-Moldのホルダー。

どんなものを作った?

構造は土台と蓋の二枚式、透明な土台にはカードを収める浅い長方形のくぼみがあり、その周囲に、少し立ち上がった縁が付いている。

カードを置いたら、上から透明なふたを押し込む。蓋と土台の立ち上がった縁の摩擦で固定する思想。ペンのキャップを押し込むと、ネジも磁石もないのに抜けにくくなる。考え方としてはあれに近い。

カード収納箱に入れるために、サイズも極力小さくした。当然、カードと全く同じサイズのものは作れないが、カードの大きさに対して、縦横それぞれ0.060インチ程度大きかったが、収納箱に入れられるサイズだったようだ。

息子も無事に、高額なカードを収納箱に保管できるようになった。

製造から特許へ

Pro-Moldは、この摩擦式ホルダーの製造を1991年10月に開始し、父親は1992年7月1日に米国で特許を出願した。当時は販売開始から1年以内に出願をすれば、新しいものとして特許出願が認められたとか。

この特許は1993年7月に成立(US5,224,600)、父親は権利を会社(Pro-Mold)へ移している。

出願から特許成立までの間、この摩擦式ホルダーは爆発的に売れたようだ。記録によると、1992年6月から特許が成立した1993年7月までの1年間の販売数は約320万個。

困っている息子を助けるために考えた製品が、商品になり特許にもなった。

ただし、話はここで終わらない。

他社による特許侵害?

Pro-Moldは、類似のホルダーを製造し、自社特許を侵害しているとして、Great Lakes Plastics社を訴えた。Great Lakes Plastics社が製「Mini Tite」という摩擦式ホルダーを製造・販売していたことが理由だ。

当然、訴えられたGreat Lakes Plastics社は反論する。

先行製品として、サイズは大きかったかもしれないが摩擦で閉じる製品(Squeeze Tite)は世の中に存在し、また、カードに近い大きさのホルダーで土台の上部にある溝に横から透明なプレートをスライドしてカードを保護するホルダーは存在した。これらを組み合わせるというアイデアは容易に思いつくものであり、そもそもPro-Moldの特許は、特許として認められない、という趣旨だ。

次は、この特許をめぐる争いを見てみる。

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